名前

 

 

「なぜ?」

そう問い返されて返事に困った。

本当のことなんて言わない。

言えるわけがない。

だからもっともらしい嘘をついた。

「私、この病室からでれなくていつも一人で寂しかったんです。

それで・・・お話相手がほしかったので。」

一つの真実と一つの虚実。

真実の言葉で誤魔化して・・・。

ダメですか?

と目で尋ねた。

すると向こうから

「わかった。」

という返事が返ってきた。

紅潮する頬を抑えて歓喜の声が漏れないようにしばらく下を向いて

何か話題を探した。

「えっと・・・えと・・・っ私、幸(さち)です。名前・・・聞いても・・・いいですか?」

「殺羅鬼裏」

近くにあった紙にペンをすべらせながら素っ気無く答えた。

似合わない名前だなと思った。

こんなに綺麗で天使みたいなのに・・・

殺とか鬼・・・とか・・・・。

この人の親はどうしてそんな名前つけたのだろう。

 

日の暮れた夕空の光が赤く射しこんでくる。

少し肌寒くなった風を感じながらそれでも少女は幸せだった。

本当は知っていたのだ。

自分の命が少ないことを。

助かる術がないことを。

それでも精一杯生きているこの命を大切に・・・。

残りわずかな一生を最後の最後力尽き果てるまで例え意識がなくなっても

この世にありつづけることを許されている限りは留まっていたいのだ。

意識がなくなってもなんてただの悪あがきかもしれないけど。

いくら両親や他の人に迷惑をかけたとしても。

生きていたいという思いは強い。

いつのまにか閉じていた瞳をあけると殺羅が椅子に座っていた。

何も写さない宝石のようなその目でそらすことせずまっすぐ幸を

見つめる。

幸せの名を持つ少女におとずれるこれからの不幸を

哀れとも思わずに。

 


どうしてこんな名前つけたんでしょうね
ホントに・・・。
って犯人オレやねんオレッ!(爆死

 

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